映画「ホタルノヒカリ」評


【映画紹介】
ひらうさとる原作の漫画を日本テレビ系列で実写ドラマ化し2シーズンにわたり、話題を呼んだ『ホタルノヒカリ』を映画化。テレビドラマ版でゴールインを果たした、グータラを極めた干物女の蛍と高野部長が、新婚旅行先のイタリアで大騒動を巻き起こす。監督はこの作品が初メガホンとなる吉野洋、脚本はドラマ同様に水橋文美江。出演には、ドラマ同様、綾瀬はるか藤木直人に加え、松雪泰子手越祐也が顔をそろえた。
【予告動画】




Let’s!ゲロゲロ!ゲロゲロゲロ〜。

 すいません。いきなりお聞き苦しい文章から始めてしまいました。でも、本当に・・・キツかったです。ただ、今回いつもと違うのは、たとえば「ステキな金縛り」とかの場合、僕だけ笑ってなくても、まわりは凄いゲラゲラ笑ってる状態、つまり、普通に純粋映画を観ている人には面白いんじゃなくて、僕のまわりにいたお客さんも、全然笑ってなくて。どんどん映画の世界から後ずさりしているような、溜め息も聞こえました。映画が終わって明るくなったときの、ほとんどの観客の打ちのめされた空気は、これまでいろんな映画観てますが初めてでした。
なので、ごく少数だとは思いますが、「ホタルノヒカリ、超面白かったぁ〜!」という人は明らかに不快にさせる文章なので、すぐに出てってください!!

 まず、根本的な問題として、作品の最大の魅力が完全に削がれちゃってます。ヒロインである蛍(綾瀬はるかさん)が、会社で仕事をテキパキこなすのに、家だとガサツで、恋愛にも無関心というギャップ。そんな彼女が、恋をするなかで、起こる仕事のトラブルを解決していく様が魅力。なのに、恋愛要素は部長(藤木直人さん)との結婚で一切ない(この時点で続編つくる意味ないと思う)、ギャップをつくるために必要な、仕事の面がほぼ1シーンで、あとは蛍は、干物女として、グータラしているだけ。ドラマ観てた側からすると、この時点で面白くないでしょ!しかも、製作者サイドの「ドラマを観ていた人たちも、干物女の蛍が見たいんでしょ?バカな演技やる綾瀬はるかが観たいんでしょ?」みたいな勘違いのせいで、そっちばかりを見させられる。確かにどっちが作品の面白いところかといえば、干物女としての蛍でしょうけれど。例えるなら、「ここのハンバーグ美味しいんだよねぇ」とよく通っていたハンバーグ屋さんに行ったら「え!?サラダセット止めちゃったの?・・・いや、確かにハンバーグが美味しいとは言ったけれどさ。あれは、サラダとのバランスがちょうどいいって意味だったんだけれど・・・。・・・しかも、焼き方、雑になってね?」みたいな感じです。

 今回映画にするにあたって、ローマが舞台なんですが、二人がローマに行くきっかけというのが、心底不快で。まず、新婚旅行でローマに行こうと約束しているのに、それが果たされないことで、部長が怒ってしまう。それを蛍が上司に相談すると、ローマに奥さんと行くのは彼の夢だ言われると。すると、ある日、蛍が帰ってくると部長がイタリアに出張するために荷物をまとめている。そしたら蛍が、その前の上司の話もあって、「私も行きます!新婚旅行しましょう!」ってことで行くことになりましたっていう展開・・・。
まず、そう簡単に新婚旅行って上手くすすむの?蛍の仕事にだって穴を空けるわけだし、彼女が不在のあいだは、他の人がそれを受け持ったりするわけでしょ?いくら、蛍の勤めている会社が大企業とはいえ「明日から旦那の出張についていくので、会社休みまぁ〜す」なんて出来るか!?部長も海外出張なので、ついでに「新婚旅行を兼ねて奥さんと行ってきまぁ〜す。」なんて、絶対に他の社員から反感くらうだろ!夫婦そろって解雇だよ!出張先に遊びに行ってんじゃねぇよ!某テレビ局の元アナウンサーじゃないんだから!
だったらね、出発が一週間後という設定にして、新婚旅行で抜ける穴を、埋めるために、旅立ち前日まで蛍は何時間も残業して猛烈に仕事をするって設定にすれば、仕事ができる蛍の姿も観ることが出来たし、この「旅立ち前日まで仕事をした結果・・・」というのが後のストーリーにもつながってくるでしょうが!!もしくは、蛍も海外出張を命じられたら、二人とも同じローマでしたでいいじゃねぇか!簡単なことだよ!
 で、飛行機乗りました。ローマの休日の名所をまわりました〜ってところでやっとオープニングタイトルが出て、絵で描かれたイタリアと蛍のアニメーションが出るのですが、本物のローマの映像観たあとに、イラストのローマ出しても、しょうがないでしょ!普通、ニセモノ(イラスト)のあと本物ドーン!とかじゃねぇか?イラスト描いた人にも失礼だよ。
 映画版のゲストとして登場する、ローマで生活する莉央(松雪泰子さん)という女性と、その弟の優(手越祐也さん)の二人にも疑問が多い。
 まず、蛍と部長がビジネスクラスに乗るんだけれど、チケットが隣り合う席がとれなくて、蛍の隣には優が座ってきます。そこで蛍は「若造がビジネス乗りやがって」みたいなことを心の声でつぶやくんですが、映画観ている僕らから言わせれば「オメェもビジネス乗ってるのは不自然だからな!!」って気分なんですが、そこで優が返すんですよ「若造のくせにって思ってます?でも、お金いっぱい貯めたんですよ。」って、これはわかります。でもね、この優という青年、なんでローマに来たのかというと、ある一件で姿をくらました姉に会いに行くためなんですね。ずっと探していた姉に会いにいくのに、お金貯めてビジネス乗る必要ってある?さっさとエコノミーで行けよ!お前、本当はローマ旅行をエンジョイしたかったんじゃねぇの!?
 さらに、この弟くん、姉に対する愛情が異常で。この話は何?弟の姉に対する禁断の愛みたいな話なの?って思うくらい。でね、姉は昔、自分が落ち込んでいたときに、白玉団子を作ってくれたから、今度は僕が作ってあげたいって・・・。お前、そんなことでお姉さんが、引きずっている悲しみが立ち直るとでも思ってるわけ?という疑問もあるのですが、実際に作った白玉団子の量が異常なくらい多くて。「うん、とりあえず、弟くんは、日本に帰ったら病院に行きなさい。君のほうが、絶対に病んでるから。」あまり大きな声では言えないんですけれど、この弟くんが気持ち悪く見えてしまうのは、手越さんの演技力の問題かなぁ・・・。
 次に莉央。まず彼女がローマでホテルに住み着いているっていう設定が呑み込めなくて。先ほどからの、仕事簡単に休めます、ビジネス乗れちゃいます、ローマで仕事もせずノンビリって。今の日本とは明らかに不釣合いなバブル感。なんか・・・なんだかなぁ〜!って感じで。
 あと、莉央が弟に対してあるウソをつくんですけれど、そのウソと真実の共有し合っているところが、しっちゃかめっちゃかなんですね。まず、弟がホテルにやってきたときに、干物女(ジャージのズボンにTシャツ)の姿でいるから「こんな格好見せられない!」って、キレイな格好をして弟の前に現れます。そのあと、部長と蛍を交えた4人で食事をしているときに、部長のことを、自分のフィアンセで、蛍は家政婦ってウソをつくんですね。しかし、そのウソを弟は見破っていて、彼女が酒で眠っている隙に、全部わかってることを蛍や部長に話します。それを莉央は狸寝入りで全部聞いている。この時点で、莉央は弟に対して、部長が実はフィアンセじゃないことも、蛍が家政婦じゃないことも、普段だらしない格好をしていることも、バラしてないんです、気づかれているとはいえ。だから次の日も、部長を旦那扱いして、キレイな格好をする必要があるのに、翌日には普通に、弟の前にジャージとTシャツの格好して、しかも蛍と部長が夫婦であることを、お互い周知のように話し始めるんですよ!え?いつ、弟には種明かししたの!?弟が全部気づいてるからって、もうウソは終わりなの!?弟くんも、少しは合わせろよ!
 でね、狸寝入りのシーンもそうなんだけれど、全体的に種明かしが早すぎるんですね。「実はこういうことでしたぁ〜!」「えぇ〜・・・・・・知ってますけれど」みたいな!この問題に関して特筆すべきは、部長の誘拐ね。実は部長は誘拐されたんじゃなくて、最初に出てきたビジネスパートナーであった外国人の、ある目的を達成するために、強引に連れ出されたんですけれど、その姿をね、ばっちり顔まで写して出しちゃってるんですよ。あそこはせめて、最初はシルエットだけにして、あのシーンなんだったんだろう?と思わせて、2回目のときにネタばらしして、「あれ部長だったんかぁい!」ぐらいのツッコミを映画観ている我々にさせてくれればいいのになぁ〜。その目的のあと、部長は別のパーティーに行ってるんですけれど、あのパーティーはなに? だって、部長はその前に行ってた出張の目的が達成されれば日本に帰るはずだったのに、当たり前のようになんかの会合に行っていて! で、そこでさっきのビジネスパートナーとのあるやりとりが実践されるのかと思いきや、そういうわけでもない。なぜ、あそこに行ったのか、あんなところにいるのか、全然わからないんですよ!
 で、そこにいる部長を追いかけてきた蛍、そこまでの行程とかやりたい放題なんですけれど、車置きっぱなしにするとか、ウェディングドレスメチャメチャにするとか・・・まぁ、いいや。で、現れた蛍に対して、そこにいる観衆から野次が飛ぶんですけれど、そこでイタリア語でなんかゴニョゴニョ喋って、日本語で「理想の妻です」で抱き合う。・・・・・・ポッカーン。頭が真っ白になるってこういうことなのかなぁ?って思っちゃいました。
 あと、二人が泊まったホテルの従業員の描き方も変で。まず、いくら住み着いている人だからって、「今度、ここに違う人たち来るから、お前、違う部屋行け!」という対応をするのも問題ですが、そのときに部屋に置き忘れた、莉央が大事にしていた、スナックの箱に入っていた写真があるんですけれど、それを掃除のタイミングでポイッとゴミ袋に捨てちゃうんですね。いやいや、いくら見た目ゴミだからって直ぐに捨てないだろ!しかもその箱には写真だけじゃなくて、蛍が麻薬と勘違いして、隠した白玉粉も入っていて、重みがあるんだからさ!
 でね、この写真がまぁ間一髪ゴミ収集車から、逃れましたと、でも写真が池に散乱してしまった。それで莉央は「もういいよ!」と吹っ切れるんですが、それを諦められない蛍は部長と一緒に、雨の中拾いに行きます。で、様子を見に行くと・・・、蛍が池の中に入って、拾ったものを部長が並べている・・・・・・ってポジション逆だろぉ〜!

 まぁ、いろんな珍騒動が終わって家に戻ったラスト。二人のあいだに起こる最高に幸せの出来事があるんですけれど。ただ、・・・ねぇ〜、その幸せを得るためには、そういう床でコトをする必要があるわけでしょ?この蛍と部長が、そんなことする関係には見えないんですね、申し訳ないけれど。だって蛍は家ではグータラしてるわけですから、これは「しあわせのパン」とか「神様のカルテ」にも感じたことですけれど。おしどり夫婦を描いた作品でも、そういう光景が思い浮かばない夫婦となると、この展開は少し萎えてしまいますよ、正直。
 そして、やっと終わったぁ〜と思っていたら、エンドロールでトドメを差してきましたよ。 大まかな内容を言うと、スタッフロールとドラマのスライドショーと平行して、蛍がある歌を口ずさむが、それが「映画とは関係ねぇじゃん!」みたいな部長の突っ込みがはじまって、部長と蛍の散々見させられたイチャイチャをまた聴かされるという展開。 まぁ、それはいいですよ。つまらないのは事実だし、斬新さを狙ってるようで別に斬新でもない感じとか、本編の馬鹿げた内容と比較したら、全然許せますよ。 ただ、唯一疑問に残ったのは、歌に対するツッコミ、その後の二人の喋りから考えると、この歌を口ずさんでいるのは、蛍という設定のはずなのに、最後のクレジットには「綾瀬はるか」って出るんですよ! えぇっ!?じゃあ、綾瀬はるかが、素でこんなふざけたことをやってるの?それに対して藤木直人藤木直人としてツッコンでるの!?という疑問が浮かんでしまって。 もちろん、そんなことないとはわかってますけれど、ただ、あそこはファンサービスも兼ねて、クレジットも「高野蛍」を通してほしかったなぁ〜。

 褒める点があるとすれば、2ヶ所。 まずは二ツ木夫妻の会話。これは僕がガールで板谷由夏さんのシーンに感動したせいもあるのですが、その夫である安田顕さんの顔面力全開の芝居とかね。それともうひとつ、莉央の子ども。写真でしか登場しないのですが、本当に可愛かった!目もパッチリ大きくて、ニコニコ笑ってて、だからこそ、こんな可愛い子どもを失った莉央の悲しみというのにも説得力があって、この子どもと写真の力は凄かったです。ただね、その写真にうつっている莉央がコギレイな格好してるんですよ。えっ、あそこは別に干物女の姿でもよかったんじゃないの?見た目干物女でも子育てはちゃんとやっているって写真のほうが説得力あったと思うんだけれどなぁ〜。

 今年、テンペスト、レンタネコといろんな爆弾映画観ていますが、これも爆弾でしょうな・・・。なんか、これだけの爆弾映画を観ていると今後どんなものでも対処できる自信があります