つくばロックフェスとトクマルシューゴと向井秀徳の話

 Goose Fresh Beatという、地味ながらも毎年音楽ファンから注目を集める夏フェスがあるのをご存知でしょうか?「GFB」といえば、ピンとくる方は多いと思います。「つくばロックフェス」といえばもっとピンとくる方が多いと思います。

 会場は僕の地元である茨城県つくば市にある「ゆかりの森」という、夏休みに小学生たちが昆虫とったり、大学生や家族連れがコテージで一泊したりする、ごく普通のキャンプ地の中心にある村の盆踊り会場のように地味な野外ステージ。

 しかし、ここに集まるアーティストのラインナップがすごいのです。たとえば昨年2011年に出演したアーティストは、東京カランコロンクリープハイプ、SEBASTIAN X、オワリカラ。昨年末から今春にかけて、メキメキと当確を表したバンドがほとんど。2010年にはまだデビューのデの字も公になっていなかった、ねごとが出演していたりする。そのなかに、MO’SOME TONEBENDERDE DE MOUSEMASS OF THE FERMENTING DREGSSuiseiNoboAz七尾旅人タテタカコなど音楽ファンには名前の浸透したアーティストが顔を揃えているのだから凄い。要は「J-ROCKシーンの先端を先に観ておきたいのなら、GFBに行け!」と言っても過言ではないのです。

 このイベント主催者は伊香賀守(いこうが・まもる)さんという方なのですが、茨城県にもっと東京の音楽を届けたいという思いで、このイベントやこれまたつくば市にある「kitchen soya」というレストランや、「つくばパークダイナー」や「水戸SONIC」という小さなライヴハウスに東京のバンドやミュージシャンを招いて音楽イベントを展開しています。

 そんな目利き(耳利きかな?)やイベントの評判もあってか、今年のGFBが現時点で12組発表されていますが、とんでもないことになっています。特筆すべきは曽我部恵一BANDKIMONOSの2組。この2組が、つくばのあの小さな隠れ家のような野外ステージでライヴをやるという画を想像するだけでワクワクするのですが、曽我部恵一BANDは今年僕は2回観ていて最後に観たのがARABAKIなのですが、驚くくらい骨太で強靭なライヴバンドになっております。KIMONOSの向井秀徳といえばZAZEN BOYSでも有名ですが、昨年このイベント初日のトリを務めたSuiseiNoboAzの1stアルバムのサウンド・プロデューサーですね。それに最近、星野源が透明少女をカバーしたりして、NUMBER GIRLの音楽が解散して10年経つ今、再評価されつつある。そのドラマー、アヒト・イナザワVOLA&THE ORIENTAL MACHINEとして出演します。

 ほかにも、COUNTDOWN JAPANにも出演したオワリカラSPECIAL OTHERStoeに続くすばらしいインストロックバンドになりつつあるrega、1stフルアルバムがCDショップ大賞にノミネートされたCzecho No Republic、昨年の個人的ベストアクトと言っても良いoono yuukiや、トクマルシューゴ属するGELLERSなど昨年に続き出演するバンドのほか、初出演組も先述したVOLAだけでなく、tricot、きのこ帝国、チーナ、The Flickersとすでに評判を呼んでいるバンドばかり。本来は県内市内の音楽好き学生にも来てもらいたいのですが、茨城の音楽イベントはROCK IN JAPANやSense of wonderだけじゃないよというのを知ってもらいたいので東京の人もぜひ足を運んでほしい。つくばエクスプレスに乗る絶好の機会でもあるので。


 さてさて、ここで抑えておきたい2名のミュージシャンがいます。向井秀徳トクマルシューゴです。この2名、やたらと接点が多いのはどちらかの熱狂的なファンの方ならご存知の方もいるでしょう。まず、2名が共演したのは、ポカリスエットのCM。砂漠の映像を背景にポカリのペットボトルがぐるぐる回るという、これまでタレント起用してきたものとは打って変わったCMなのですが、BGMで使われているのが、トクマルシューゴの「Hidamari」(アルバムEXIT収録)であり、ナレーションを務めているのが向井秀徳なのです。

 僕の記憶が正しければ、この2組が音楽という形で直接共演したのは、渋谷にあるライブハウスWWWがオープンして2日目。チャン・ギハと顔たち(韓国)、トクマルシューゴZAZEN BOYSの3組が対バンしています。確かこの日は、照明の熱でステージ袖のカーテンに引火しボヤ騒ぎになったり、ナインティナイン矢部さんの兄・美幸さんが登場し、和傘で球を回すパフォーマンス(海老一染之助・染太郎で有名なやつ)をやったりと、いろんなことが起きたライヴでした。

 あと、昨夏にお台場でおこなわれた「neutralnation」(トクマルバンドが全員でZAZENのライヴを袖で観ていた)や、四国でおこなわれたSTARS ONでも一緒になっているなど、やたらバッティングが多い2組ですが、お互いの口から名前が出るようなことはなかったのです。しかし、昨年のCOUNTDOWN JAPANで、これまた同じ日に出演した、ZAZEN BOYSトクマルシューゴ。MOON STAGEのトリを務めたトクマルはMCでこんなことを語っています。

 「本当はカウントダウンとかやりたいんですけれど・・・、僕の音楽はノリづらい曲ばかりで年越しもしづらいんですね。来年やらせてもらえたら嬉しいんですが、そのときもきっとノリづらい音楽をやると思います。・・・・・・でも、ZAZEN BOYSほどではないですけれど(会場爆笑)。」

 向井側からトクマルを意識した発言などはまだ見られないが、星野源とJAPAN JAMで共演したり、在日ファンクとZAZENの対バンでハマケンをステージに呼んだりしているので、トクマルシューゴの音楽は聴いてないわけないでしょうと勝手に決めつけおります。もし、GFBで同じ日の出演になったら、この2人が直接会話する姿を観ることができるかもしれない。